MCTオイルダイエットにありがちな誤解【MCTオイルの嘘と真実、糖質制限との関係性】

オイル

ダイエット目的でMCTオイルを活用している人は多いと思います。

自分も持っており、飲み物に混ぜたり料理にかけたり、あるいはそのままペロっと飲んでみたりしています。

糖質制限+MCTで痩せる!といった文言を見かける事がありますけど、これは嘘ではありませんが正確でもありません。

今回はMCTオイルを用いたダイエットでありがちな誤解について説明します。

MCTオイルとは何か

MCT(Medium Chain Triglyceride)とは中鎖脂肪酸の事です。

一言で表現するなら、「体に吸収されやすい油」ですね。

一般的な油(菜種油など)は長鎖脂肪酸といって、油の分子が繋がっているものが長いんです。

体に吸収するにあたってその分子同士のつながりを断ち切らなけばいけないんですけど、そのためにはある程度の時間を必要とするんです。

それに比べて中鎖脂肪酸は分子の繋がりが比較的短いので、短い分だけ早く体に吸収されるという訳です。

早く体に吸収される事によって、糖質制限をしている人がブドウ糖に代わるエネルギーとして活用している脂質由来のエネルギーである「ケトン体」を素早く作り出す事が出来る…というのがMCTオイルの最も重要な効能と言えます。

ココナッツオイルとの違い

MCTオイルと近い特徴を持った油としてココナッツオイルというものが有ります。

名前の通りココナッツ(の種)から搾り取られる油ですが、ココナッツオイルもダイエット効果があるといった触れ込みで大人気になりましたよね。

実はココナッツオイルにもMCTは多く含まれており、約6割程度はMCTが含まれています。

MCTオイルとは基本的にMCT100%の油の事を指します。

要約するなら、「ココナッツオイルに含まれているMCTだけを集めたのがMCTオイル」といった感じですね(MCTオイルの原材料はココナッツオイルだけではありませんが)。

ココナッツオイルには中鎖脂肪酸だけでなく長鎖脂肪酸に分類されるものも多く含まれており、そういった油(オレイン酸やリノール酸)にはMCTとは異なる効能が期待できます。

MCTオイルはまさに100%MCTのオイルですから、MCTの持つ効能に期待したい場合にはココナッツオイルよりもMCTオイルを選択した方が良いでしょう。

MCTオイルでダイエット?

まず言っておきたい事があります。

それは、糖質過多な食生活を送っている分にはMCTオイルをいくら摂取しても痩せません

MCTオイルダイエットの大前提は、あくまでも糖質制限を実践する事です。

ですから、日々の食事内容を変えなくてもMCTオイルを飲んでいれば痩せる!という事は全くありませんのでご注意下さい。

MCTオイルの本来的な価値とは、体内で生成されるケトン体を増やす事であり、糖質制限状態における有効なエネルギー源であるという事です。

MCTオイルダイエットにありがちな誤解

MCTオイルダイエットの説明としてよく用いられるものとして、「MCT(中鎖脂肪酸)オイルは通常の油(長鎖脂肪酸)に比べて吸収が早くエネルギーになりやすいので体に体脂肪として蓄積されにくいからダイエットに効果的」といったものがあります。

こういった特徴自体はその通りです。

先ほども触れたように、中鎖脂肪酸は分子の結びつきが短い分だけ吸収が早く、速やかにエネルギーに変換されやすい特性を持っています。

さらにはそういった特徴から体脂肪として蓄積されにくいというのも本当です。

「じゃあ何も問題ないじゃないか」と言った話ですが、ここで問題となるのは普通の油に関する部分です。

ハッキリ言って、普通の油を摂取した場合もそう簡単には体脂肪として蓄積される事はありません

糖質制限をしている人ならもうご存知でしょうが、極々一般的な食生活で摂取する程度の脂質量であれば、脂質を摂取したからといってそれが体脂肪蓄積に繋がるという事にはなりません

MCTオイルの摂取が普通の油を摂取するより脂肪を蓄積しにくいというのは本当なんですが、普通の油を摂取しても多くの場合は脂肪の蓄積に関与しないので、脂質の摂取による体脂肪の増加といった点に関して言えばどちらも大した差はありません。

要するに、「MCTオイルにしろ普通の油にしろ、脂質を食べ物として摂取しても簡単には太らない」という事ですね。

なので「MCTオイルは普通の油に比べて体脂肪を増加させにくいから痩せる」というのは少々ズレた視点だと言わざるを得ません。

MCTオイルの正しい活用法

じゃあMCTオイルをダイエット中に取るメリットはないのかと言えば、そんなことは全くありません。

MCTオイルの正しい活用法は、糖質制限中のエネルギー源とする事にあります。

以前に糖質制限をしている時には「カロリーオフ」よりも「カロリーが多いもの」がありがたいといった記事を書きました。

ステーキこれからのダイエット食品は低糖質(糖質オフ)&高カロリーが売れる!【糖質制限ダイエットとカロリー不足】

糖質制限の失敗談で最も多いのは、普段の食生活から糖質量を減らしただけにしてしまう事です。

その結果、糖質制限をするのと同時にカロリー制限までしてしまうような結果となってエネルギー不足で体調を崩すという方は少なくありません。

そうならないためにはタンパク質や脂質の摂取量を増やす事が重要なのですが、小食な方だとそれが意外と難しい事も多いようです。

そんな時にMCTオイルを活用するのは非常に有用だと思います。

MCTオイルは消化吸収が早いので、摂取した分を直ぐにエネルギーとして使えるようになります。

もちろんMCTオイル以外の油(オリーブオイルなど)を活用しても良いのですが、MCTオイルにはケトン体を生成しやすいという大きなメリットがあります。

ケトン体は脂質由来のエネルギーであり、ケトン体をメインエネルギーとして生活する事は、極めて高燃費(糖質からブドウ糖エネルギーを得るよりも脂質からケトン体エネルギーを得る方が断然エネルギー効率が良い)であるとともに、ケトン体には体内の各臓器において保護作用を発揮する特徴がある事が分かっています。

つまりケトン体をメインエネルギーとして生活する事は、糖質(ブドウ糖)をメインエネルギーとするのに比べると、「高燃費かつ体に優しい一石二鳥の生き方」なんですね。

結論:MCTオイルだけでは痩せない

MCTオイル自体はケトン体を生成しやすいといった特徴を持つ、極めて有用なオイルだと言えます。

しかしダイエット目的として活用する場合には、あくまでも糖質制限をしている事が大前提である点は注意が必要です。

糖質制限を正しく実践していれば、MCTオイルを飲まなくても普通に痩せる事が出来ます

逆に糖質制限をしていない状態でMCTオイルをいくら飲んでも痩せる事は出来ません。

正確には、人間の体は摂取エネルギーが増えれば消費エネルギーも増えるように出来ているので、MCTオイルを取り入れた分消費エネルギーが増えた結果としてダイエット効果を生み出す可能性はあります。

MCTオイルは素早くケトン体エネルギーとして消費されるので、体がケトン体をエネルギー源とする状態にスイッチを切り替える事で体脂肪がエネルギーとして消費されやすくはなるかも知れません。

しかしその効果は糖質を普通に摂取している食生活では極めて限定的ですから、目に見えるほどの効果を生む可能性は低いと思っておいた方が良いでしょう。

結局のところ、ちゃんと痩せようと思ったら糖質制限をする必要があり、糖質制限をしていればMCTオイルの有無に関係なく痩せる事が出来る事を考えると、「MCTオイルで痩せる」というのは少々的外れと言わざるを得ません。

ダイエット効果といった側面から見た場合、MCTオイルはあくまでも糖質制限ダイエットの補助輪のようなものです。

体脂肪を燃焼させやすくするために活用する分にはそれなりに有用だと思いますが、そもそもちゃんとペダルを漕いでいないと(糖質制限を実践していないと)前に進めない事は正しく認識しておきましょう。

ペダルを漕がずに補助輪の付いた自転車に座り続けるだけでは、目的地へたどり着く事は出来ませんのでね。